野山に囲まれた暮らしをはじめ、2年目を前にしたころ、役所の職員から電話がありました。
地域ブランディングをテーマにした座談会を開くので、「よそ者」の立場で意見を聞かせて欲しい……という内容でした。
「よそ者」と言われて寂しく感じましたが、「まちを変えるのは、よそ者、若者、馬鹿者のアイデア」などという言葉が流行って久しいですし、よそ者には違いないので、宇宙のような大きな心で受け止めました(笑)
それにしても「地域ブランディング」ときましたか……。
私はかつて「ライター」を名乗っていました。
ですから「地域を活性化をしなくていけない」という取り組みは日本中が行っていて、めちゃくちゃにハードルが高いことだと理解しています。
理解した上で……
・数少ない若者を懸けて池袋と争うという話
・田舎でもトヨタのようになれる可能性はあるという話
を書いてみようと思います。
このような記事は需要がないとは思いますが「閑人閑話」ということで。
人口減少は新たな局面に入り池袋との争奪戦がはじまる
日本の人口は減り続けています。
厚生労働省が発表した人口動態統計によると、2019年に生まれた赤ちゃんの数は、前年より5万3166人少ない86万5234人。一方、高齢化が進んでいるため、年間の死亡数は138万1098人と、戦後最多となりました。
自然減は過去最大の51万5864人と加速しています。
とはいえ、私が移り住んだまちでは、昭和30年代から人口が減り続けています。
私が伝えたいことの一つ目は「人口減少問題に対する感覚がすでに麻痺している」ということ。
多くの人が「減ったらまずいな」とは思っているが、「このまま減っても大問題にはならない」と高を括っているように感じます。
数年前、消滅可能性都市の話題が流行ったのを覚えていませんか?
この時、東京都豊島区も消滅可能性都市に挙げられました。新宿・渋谷とともに東京を代表する繁華街「池袋」がある豊島区です。
池袋が消滅するなんてあり得るのか—と思うでしょうが、人口減少によって池袋でさえ人がいなくなってしまうかもしれないのです。
これまでは、放っておいても若者が地方から東京に流入していました。東京は人口減少を心配する必要がなかったのです。
しかし、出生数が減り、東京へ流入する若者が減ってしまいました。
この先に待っているのは、東京と地方での「人」の争奪戦です。
減り続ける「人」を懸けて、野山に囲まれたこのまちは池袋と競うのです。
地域ブランディングはロゴをデザインするような表面的なものではない
「旅行に何を求めているか」という調査はどんな機関が行っても「おいしい物を食べに行きたい」のような答えが1位になります。
これは外国人にも共通しているそうです。
ならば「食」こそが地域活性化の鍵なのではないかと誰もが気付きます。
しかし、食は日本中に溢れかえっています。
皆と同じことをやっても埋もれてしまいます。
食と一口にいってもいろいろな需要があり、幅広いです。
だから何に絞って、誰に来てもらうのかを徹底的に考える必要があります。
これがブランディングです。
地域ブランディングの話題になると、「新しいロゴを作ろう」「看板を統一しよう」という話になります。
しかしブランディングは、そんな表面的なことでは絶対にないです。
広告宣伝費が多い会社のトップはトヨタ自動車だそうです。
年間に掛けている費用はなんと4487億円。
市町村がPRに使えるお金はどれだけあるのでしょう?
「トヨタ自動車だから特別ではないか」と思うかもしれませんが、3位は日産自動車で3134億円です。
では、日産の車種を20種類言える人がどれぐらいいるでしょうか?
トヨタはどうでしょう?
広告宣伝費の中で1番重要なことは名前を覚えてもらうこと。
トヨタの方が車種を言える人が多いはずだし、性能が優れていると思う人も多いはずです。
この「トヨタブランド」を築くのにおよそ4500億円を掛けているのです。
一方で、ランキング下位のユニクロのCMを思い出してほしいのですが、一つの商品だけを一定期間、徹底的に宣伝しています。
知ってもらうために1つに絞っている訳です。
それでも712億円も掛けている訳ですが……。
他と違う戦略に絞った地域ブランディングなら抜きん出る可能性がある
さて、「まち」を少ないお金で認知してもらうためにはどのようにしたら良いでしょうか。
予算が少ないことを思い悩む必要はないと思います。なぜならば、日本中の市町村の予算は、ほぼ同じでしょうから。
全国どこの観光パンフレットを見ても、あれもこれも詰め込んでいます。
「費用が少ないのだから絞らないと伝わらない」といつも思います。
日本中の市町村の予算は、ほぼ同じ……ならば同じことをしていては埋もれます。
伝えたいことの2つ目は、
違うやり方なら抜きん出る可能性があるということ。
トヨタのようになれる可能性があるということ。
他がやらない戦略を絞ってやるということが、すごく重要なのではないでしょうか?